2015年01月05日

ブックレビュー「製薬企業クライシス-生き残りをかけた成長戦略-」

 クリスマス休暇中に「2025年への挑戦 製薬企業クライシス -生き残りをかけた成長戦略-」という本を読みましたのでレビューを書きます。まず、最初に断っておきたいのですが、この本は製薬企業の危機について述べている本ではございません。著者の宮田俊男氏は日本医療政策機構の官僚で、直近の日本の医療行政やこれから始まる施策について述べています。とりわけ、2015年4月に始動する日本医療研究開発機構(AMED、日本版NIH)について詳細に解説されています。本書ではAMED以外にも幅広い政策について言及があり、私の方でフォローしきれていない部分や誤解などがあるかもしれませんが、私の理解の範囲と読後にググったこのとについて備忘録代わりに記します。

製薬企業クライシス.jpg

1.日本医療研究開発機構(AMED、日本版NIH)の設立について
 AMEDの設立目的は、基礎研究の成果を医療の質の向上や産業化につなげること。所轄官庁の縦割りを排除した組織にするとのことで、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の三省からの予算が割り振られる。AMEDの初代理事長には慶應大学医学部の末松誠医学部長が就任予定。具体的には以下の特徴を有する組織になる。

①医療分野の研究開発に対する助成(公募研究)および委託事業
 AMEDはファンドとしての機能を保有する。AMEDの年間予算1200~1400億円に加え、これと同額程度の出資を民間企業から募り、大学や研究センターに公募研究を通して投資することにより、基礎研究から産業化までを支援する。一方、AMEDが委託する事業の例としては、京都大学におけるiPS細胞を用いた再生医療への応用研究があげられる。

②公募研究および委託事業の研究管理
 厚生労働省傘下、医薬基盤研究所の創薬支援戦略室はAMEDに移管される。創薬支援戦略室が中心となり公募研究および委託事業の研究管理、プロジェクトマネジメントを行う。本書ではAMED内に創薬化学(メドケム)機能を保有するとの記載があるが、他の官報やWEBサイトを調べる限りAMED自体が研究所を保有すること、ならびに研究員を直接雇用するといった情報は確認できなかった。

③成果を製薬企業に導出するなどの実用化につなげるライセンス活動
 AMEDによる公募研究や受託事業の成果を実用化につなげるべく、30名程度の製薬企業勤務経験者が雇用されライセンス業務を開始している。

④臨床研究の基盤整備
 臨床研究中核病院、早期・探索的臨床試験拠点、橋渡し研究支援拠点の強化・体制整備を行う。

【アメリカNIHとの違い】
 アメリカNIHの年間予算は約3兆円、その傘下に27の研究所を有し18,000人(うち研究者6,000人)が雇用されている。一方、日本のAMEDの年間予算は1200~1400億円程度で300人程度のスタッフが雇用される見込み。AMED自体は研究所としての機能は有さず、基礎研究への投資と研究管理、臨床試験の環境整備が主な業務である。

2.その他日本で進められている医療や医薬品産業に関する政策について
①混合診療の拡充
 「日本再興戦略 改訂2014」に基づき「患者申し出療養制度」が新設される見込み。これにより、特定の医療機関において、患者の申し出に基づき国内未承認薬などを混合診療として使えるようになる。

②医療技術評価(Health Technology Assessment, HTA)の導入
 医療技術評価を導入することによりそれぞれの治療法や薬剤の費用対効果を明らかにする。これにより「社会保障費用(医療費含む)膨大の適正化」と「医療分野における技術革新を受けたい患者のニーズ」の両立を目指す。英国NICEによる技術評価をロールモデルとしており、2016年から導入予定。

③特定疾患治療研究事業対象疾患の適応範囲の拡大
 56疾患が対象であったが、2015年度中に対象疾患を約300に増やす。それに伴い、総事業費は1190億円(2011年)から1820億円(2015年)になると試算されている。疫学情報の収集、病態解明、医薬品の研究開発の促進が期待される。

④医療体制の再編成
 高度急性期に医療資源を集中投入する一方で、在宅医療の充実を行う。

⑤早期・探索的臨床試験拠点の設置
 2011年に国立がん研究センター、東大医学部付属病院など5施設が早期・探索的臨床試験拠点に認定された。

⑥臨床研究中核病院の設置
 2014年の医療法改正により臨床研究中核病院が設置される。臨床研究中核病院は高度な臨床研究を実施するとともに、他の医療機関の臨床研究実施のサポートも行う。臨床研究中核病院にはAMEDから重点的に国費が投入される。京大医学部付属病院など10の病院が臨床研究中核病院として認定される予定。

⑦外国医師の臨床修練制度の見直し
 外国医師は研修を目的に来日した場合に限り診療を行うことが認められてきたが、今後は日本人医師への指導や臨床試験実施の目的に対しても門戸を広げる。また、手続きや要件の簡素化も併せて実施される。

⑧保険薬局の役割の拡大
 24時間調剤および在宅業務を提供できる体制が評価されることになり、基準調剤加算の算定要件が見直される。在宅医療において使用できる注射薬が拡大されることに伴い、保険薬局でもそれら注射薬を提供できるようになった。また特定保険医療材料についても保険薬局で取り扱えるようになる。具体的には在宅の寝たきり患者用の気管内ディスポーザブルカテーテル、膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル、在宅血液透析用の医療材料など。

⑨特定行為にかかわる看護師の研修制度
 医師に限定されていた医療行為について、研修を受けた看護師が一定の条件のもと実施可能になる。具体的には、持続点滴で投与されている降圧剤・昇圧剤・利尿剤の投与量の調整、病態に応じた血糖値コントロールのためのインスリン量の調整など。米国のナース・プラクティショナー(NP)制度をロールモデルとしている。

⑩医薬品医療機器総合機構 (PMDA)の機能強化・増員
 ドラッグ・ラグ解消のためPMDAの機能強化・増員に取り組んでいる。2007年時点に341人だったが、2012年時点で678名まで増員した。最終的には1000名体制で、医薬品および医療機器の迅速な審査に向けて取り組んでいく。

⑪薬事法の改正
 2013年に薬事法が改正され、法律名は「医薬品、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保などに関する法律」と改名された。略称は医薬品医療機器等法。同法では旧来の薬事法の対象となっていた「医薬品」に加え、「医療機器」および「再生医療等製品」も規制対象として扱われる。

⑫GCP省令の改正
 2012年にGCP省令が改正された。臨床研究中核病院を含む複数の医療機関が治験を実施する際、契約を一元管理することが認められるようになった。従来は全書類、全項目、前文字について治験データと原資料を照合することが義務付けられていたが、改正GCP省令では「治験の実施を適切に管理できている場合においては、必ずしもすべてのデータなどについて原資料の照合などを求めるものではない」と明記された。また治験責任医師の押印などの手続きが大幅に簡略化された。治験の運用に関する「GCP運用通知」は廃止された。
posted by terupurine at 03:30| Comment(0) | ブックレビュー | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。